お取り寄せの人気ショップの一つに、高級パンをネット販売する「ルセット」がある。美味しさを追求するため、添加物やイーストを使わず天然酵母だけで発酵させ、最高級の素材を使ってパンを作っている。最高の味を引き出す手段として、長時間にも及ぶ複雑な工程を手作業で製造しており、一日に生産される量は限定される。このため、ネット販売の予約開始日には、 1 本 3,000 円以上もするパンが、たった数分で売り切れてしまう人気となっている。
人には、手に入りにくいものを欲しがるという心理がある。「売り切れ」だと分かった途端に欲しくなったり、数量限定のメニューを思わずオーダーしたりという経験がある人も多いだろう。このような傾向を心理学では「希少性の原理」と呼んでいる。コンビニのお菓子売り場でよく見かける季節限定商品も、この原理を応用したものだ。季節限定以外にも、ルセットのような数量限定、期間限定、お得意様限定、販売店限定など、「希少性の原理」を生かした食品の販売は今後も増えるだろう。食品業界を含めマーケティング市場の軸が「値段」から「品質」へと変容している。これからは、ただ安く売るだけでなく、場合によっては高く売る工夫も重要になってくるといえる。
(2004 年 11 月 富士通総研 田中秀樹)
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