雑誌広告や店頭のポスターに携帯電話のメールアドレスや 2 次元バーコードを記載し、携帯電話のサイトに誘導するタイプの広告が増えてきた。広告に目を留め、興味を持ったその瞬間にアクセスしてもらうことを狙ったものだ。食品マーケティングの現場でも、プレゼント・キャンペーンやアンケートなどで携帯電話が活用されている。
■パケット定額制の普及で今後利用が拡大
携帯電話を使ったプレゼント・キャンペーンの事例として有名なのは、キリンビバレッジの「ネットで Fire 」だ。缶コーヒーに貼付された応募シールをめくると、キャンペーン・サイトのアドレスと 12 桁のシリアルナンバーが記載されており、携帯電話等からサイトにアクセスし、サイト上でトランプを使ったゲームに勝つと携帯ストラップなどの景品が当たる。缶コーヒーを飲んだその場で応募が出来て結果も分かる、インスタント・ウィンと呼ばれる手法の手軽さが受け、約 1000 万口の応募のうち、携帯電話からの応募が半数以上を占めた。
マクドナルドも携帯電話を活用している。ターゲットとする 18-39 歳の層のテレビ視聴率低下を補うためにインターネット活用を検討していたが、家で操作するパソコンより、外出先でも使う携帯電話の方が外食の利用シーンに向いている、との考えから、携帯電話に力を入れることになった。キャンペーン・サイトでインスタント・ウィンを行ない、ゲームに負けた人には、店頭で携帯電話の画面を見せると割り引きが受けられる“印籠型”の「 50 円引クーポン」を提供した。紙のクーポンだと、いざ使おうと思った瞬間に持っていなかったり財布の中から出てこなかったりするが、携帯電話に保存してあればそんな失敗も無い。実際、街頭等で配布する紙のクーポンの 4 倍の利用があったという。
プレゼント・キャンペーンだけでなく、消費者の声を聞く活用方法もある。サンクスはお弁当の容器に 2 次元バーコードを付け、携帯サイトを使って味や値段への購入者の意見をアンケートした。商品の量、価格への満足度、再購入の意向など選択式の 12 問の質問に加えて、自由記述方式で感想を聞いた。新作高級弁当の評価を聞くことで、 POS データには表れない“満足度”を量り、今後のヒット商品開発につなげる考えだ。
■パケット定額制の普及で今後利用が拡大
携帯電話を使ったマーケティングには、 7,000 万人を超えるという対象者の多さ以外に、メッセージが届いてから受け手が行動を起こすまでのタイムラグが短い、そして、個人が 1 台ずつ常に持ち歩き、いつでもどこでも利用できる“ユビキタス”という特徴もある。コンビニでプレゼント・キャンペーンの案内を見た場合、パソコンだと家に帰って応募しようとして帰り道で忘れてしまったり、パソコンを立ち上げるのが面倒で応募しなかったりすることもあるが、携帯電話ならすぐその場で応募が可能だ。同時に、娯楽的要素もあるので、友人同士の会話で話題になり、一緒に画面を見ながら応募するなど、クチコミで伝わる効果もある。
このようなメリットを持つ反面、携帯電話のインターネット接続機能やメール機能で使う通信料金(パケット代)は、多くの場合、従量制でユーザーが負担している。つまり、ユーザーがわざわざ身銭をきって宣伝メッセージを受け取ったり、企業とコミュニケーションすることになり、これを嫌って参加しない人も多い。
ただ、この状況も昨年から本格化したパケット通信料金の定額サービスで変化しつつある。富士通総研が行ったアンケート調査「携帯電話の利用実態とニーズ分析 2005 」によると、定額サービス利用者は携帯電話利用者の 8.4 %とまだ少ないが、「今後利用してみたい」と意向を持つ人は半数近くの 45.1 %に達する。ユーザーがパケット定額サービスに切り替えるとパケット利用が増えるので、今後、企業のマーケティングに参加する人も増えると予想される。昨年後半あたりから、携帯電話を本格的に活用する企業が増えてきた。携帯電話に関しては、様子見と決めている企業も、そろそろ取り組んでみてはいかがだろうか。

(2005 年 4 月 富士通総研 田中秀樹)
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