スーパーで販売される豆腐といえば、とくにナショナルブランドがなく、価格勝負の代表例といった印象が強い。そんなスーパーの豆腐売り場で、奇抜なパッケージと高品質を武器にした男前豆腐店が売上を伸ばしている。今回は、価格競争しかないと思われている商品カテゴリーにおける差別化の秘訣を見ていこう。
■高品質だけでは差別化できない
家計調査によると、豆腐の一世帯あたりの年間支出金額は平成 10 年の 8,031 円をピークに年々減少し、 17 年は 6,377 円となっている。これは年間購入数量と単価が同時に下がったことによるもので 17 年の一丁の単価は 88.2 円だった。豆腐は3パック 100 円で見かけるようにスーパーの安売り対象商品で、店頭では価格勝負のスーパーのオリジナルブランドが顔を利かせている。OEMを供給する豆腐メーカーは、断ったら仕事が来なくなることを心配してスーパーのバイヤーからの値下げ要求を断れず、設備投資をして製造コストを抑える値下げ競争の悪循環に突入している。
そんな価格競争しかなかったスーパーの豆腐の世界で、販売価格を上げて勝負したのが男前豆腐店だ。普通の豆腐の3倍の手間をかけ、何十種類の豆腐を試食しても必ず分かる本物の味を提供し高品質で勝負した。「おたま豆腐」、「トカタマ。」、「どんどこ豆腐」という商品で 200 円の壁に挑戦し、そして、テレビで有名になった「男前豆腐」や「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」で 300 円の壁を打ち破った。男前豆腐店の特徴は味だけでなく独特のネーミングやパッケージにもある。
今でこそテレビで取り上げられる男前豆腐店だが、元々はスーパー向けの低価格豆腐を製造するメーカーだったのでブランド力がなく、いくら味が良くても店頭で消費者に選ばれない。試食や広告キャンペーンを展開する予算もなく、残された差別化手段はパッケージしかなかった。そこで、女性向けのパッケージが多い豆腐の中で、あえて目立たせるように男性的でインパクトのあるパッケージを採用した。その際、大豆やにがりのよさ打ち出すのではなく、例えば水切りした濃厚な豆腐のことを「水もしたたるいい豆腐だから男前豆腐」といったようにキャラクター化し、ネーミングとパッケージで世界観を発信した。
■ストーリーマーケティングで定番商品化に成功
味だけではなく世界観に関心を持った消費者は、家族や知人に男前豆腐店のことを話して聞かせたり、ブログに書き込んだりした。このクチコミが広がり、評判を聞きつけた消費者がスーパーに「男前豆腐を入れて」と投書したり、途中で入荷をやめた店でも消費者のリクエストで再度並べたりするようなって、スーパーの定番商品になったという。
商品のメッセージを消費者の感情に作用するストーリーに変換して親近感を抱かせる手法をストーリーマーケティングという。コモディティ化している商品に対し、消費者の常識をくつがえすような発想で驚きを与えると特に効果が高い。男前豆腐店は、安売りが当たり前と思われているスーパーの豆腐の世界で、価格、パッケージ、味で驚きを与え、ストーリーでクチコミを誘って定番商品となり差別化に成功した。
ただ、男前豆腐店に関しては残念なことがあった。同社は豆腐を作る際に出た大豆がらを燃やしたとして廃棄物処理法違反の疑いで書類送検された。これは会社の急成長に内部管理体制の整備が追いつかなかったことが原因だろうが、人気が出た先の不祥事で親近感を失った人も一部にいる。ストーリーマーケティングを行う上では、製品だけではなく会社自身のストーリーも重要になってくる。
( 2006 年 11 月 富士通総研 田中秀樹)
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