「福島で520円のダブルチーズバーガーセットが東京では610円に」。日本マクドナルドホールディングスは、同じ商品の販売価格をエリア毎に変える「地域別価格」を6月から導入した。当初懸念された客数減や客単価の減少は見られず、9月からカレーチェーンの壱番屋が導入するなど他のチェーンが追随し始めた。
■人件費や賃料などのコスト要因だけでない価格制度
東京、大阪などの都心部で値上げする一方、地方では値下げするという、地域別価格制度をマクドナルドは6月から導入した。価格変更は、値上げ(3段階)、据え置き、値下げの計5段階で行われたが、8月時点で値上げした店舗が全体の約9割を占めており「実質的な値上げ」となっていた。
同社が地域別価格の導入に踏み切った背景には、大都市で人件費や店舗賃料が上昇し、地方の店舗とコスト構造に大きな違いが出ていることがあげられる。例えば、人材サービスのインテリジェンスによると、6月のファーストフードスタッフの時給は、北海道の平均が684円であるのに対し関東は920円と大きな開きがある。
ただ、実際には賃金や賃料の水準などのコスト要因に一致した価格体系ではなく、各地域の価格への敏感さや商品の満足度などを反映したものになっている。同社では、年間6億枚〜7億枚に達するレシートを5年分洗い出し、県民所得や満足度調査結果などのデータと組み合わせて1年間検討し、売上が最大になる価格を地域別に設定したという。
今まで日本の外食業界では一律価格が当たり前であったが、米国のマクドナルドでは同一地域でも立地によって価格が異なる。日本でも外食以外では、自動販売機の缶飲料の価格が行楽地と住宅地で違ったり、航空運賃がシーズンによって異なるなど、立地や時期によって価格が変わるケースはよく見られる。とりわけ価格変更が容易なインターネット上では、顧客の需要に応じて価格を変動させ利益を最大化するダイナミックプライシングが広がっている。
■最適な実勢価格を設定する仕組み作りが重要に
マクドナルドが地域別価格を導入した際に行われた外食主要13社に対する調査では、地域別価格を明確に否定したのはスターバックスコーヒージャパンなど3社だけで、残りの10社は地域別価格に理解を示していた。マクドナルドの成功により、今後他社が追随し、外食業界の全国一律価格が崩れることになるだろう。
全国一律という縛りを外すことで、地域だけでなく、立地や、期間限定商品という形で時間軸も加えて価格を自由に変えることが可能になる。ただ、価格を変えて利益を最大化するには、的確な市場把握と、自社商品の評価の仕組み、そして、素早く実行する体制作りが欠かせない。今までのやり方とは異なる精緻なマーケティングを実行する体制造りが必要になってきた。
( 2007 年 10月 富士通総研 田中秀樹)
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